大腸がん検診の種類と特徴
大腸がんとは、直腸や結腸にできるがんの総称です。
がんの中でも男女ともに罹患率が高く、年齢別には40代頃から徐々に罹患率が上昇し、男性ではおよそ10人に1人、女性では12人に1人が、一生のうちに大腸がんと診断されています。多くの方にとって罹患リスクのある病気だからこそ、定期的な検診で早期に発見することが重要です。
大腸がんの原因
大腸がんの発生には、生活習慣が大きく関わっているとされています。食生活の欧米化による高脂肪・低繊維な食事や、過度な飲酒や喫煙、運動不足による肥満などが原因として挙げられます。
逆に、スポーツや歩行などの身体活動量を増やすことで、大腸がんの罹患リスクを減らすことができるという研究結果も出ています。※1
(参考)※1 多目的コホート研究(JPHC study) 身体活動量と大腸がん罹患との関連について
大腸がんの症状
大腸がんは初期段階では自覚症状がなく、進行すると徐々に症状が現れることが一般的です。
以下は大腸がんの一般的な症状ですが、これらの症状があるからといって必ずしも大腸がんであるとも限りません。症状が現れた場合、早期に医師へ相談することが重要です。
便の変化
- 血便や便に明らかな血液が混じる
- 便が細くなる(狭小化)
- 排便後にすぐ便意を催す(残便感)
腹痛
- 腹部の痛みや不快感が続く
- 排便時に腹痛が起こる
その他の体調変化
- 過度の疲労感や虚弱感
- 不明熱(原因不明の発熱)
- 急激な体重減少
大腸がんの5年生存率
5年生存率とは、がんと診断された方のうち5年経過時点まで生存している方の割合を数値化したものです。ステージ別の生存率をみると、ステージⅠまでの早期段階で治療を開始すると、90%以上の方が存命できる結果が出ています。
大腸がんの5年相対生存率(2013-2014年)
- ステージⅠ:94.5%
- ステージⅡ:88.4%
- ステージⅢ:77.3%
- ステージⅣ:18.7%
※相対生存率は、がん以外の死因による死亡の影響を補正した生存率です。
大腸がん検診の種類
大腸がんの検診にはいくつかの検査方法があります。代表的な3つの検査を紹介します。
便潜血検査
健康診断などで35~40歳以上の方を対象に、広く行われている大腸がん検診です。その名のとおり、便に血液が含まれているかを調べる検査で、肉眼では見えないような微細な量の血液も検知することできます。大腸内にがんなどの腫瘍があると、便が通る際にこすれて出血することがあるため、潜血反応は大腸の異常のサインとみなすことができます。検査の結果、血液の陽性反応がみられた場合は、精密検査として大腸カメラ検査を行います。検査用の便は自宅で専用の容器に2日間分を採便し、受診当日に医療機関へ提出します。
便潜血検査のメリットは身体への負担が無いことです。食事制限を行ったり、医療機器や薬剤を体内に入れる必要がなく、簡単に検査を行うことができます。
一方のデメリットは、出血がなければ「異常あり」とならないため、進行前の小さいがんの見逃しが起こりやすいことです。また、出血の原因になる病気はがんだけではありませんので、陽性となっても正確な診断をつけてもらうためには精密検査を受けなければなりません。
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
肛門からファイバースコープ(内視鏡)を入れて、大腸内部を直接観察する検査です。大腸の様々な疾患の有無や、がんの前兆となりうるポリープなど多くのリスクを発見できます。検査を行うためには大腸内部を空っぽにしておく必要があります。そのため前日から食事制限を行うとともに、下剤を服用し腸管内を洗浄しておきます。
大腸内視鏡検査のメリットは、病変やポリープが見つかった場合にその場で組織を採取し、精密検査でより正確に病気を診断できることです。
一方のデメリットは、検査中に痛みや苦しさを感じる可能性があることです。また苦痛を和らげるために鎮静剤(眠くなる薬)を使用しますので、検査後も回復するまでの間は足元がふらついたり、意識がボーっとしたりします。よって、車の運転など集中力を使う行動は避ける必要があります。またごく稀ではありますが、腸内が傷ついて出血等が起こるリスクがあります。
なお、大腸内視鏡検査を受ける頻度は、初回の検査結果に異常が無かった場合は5年に1度程度が良いとされています。ただし、過去に大腸ポリープの切除をしていたり、何らかの異常が見つかっている場合は、検査の頻度を医師と相談しましょう。
大腸CT検査
CT検査は身体の周囲からX線を照射して撮影し、身体の断面画像を見ることができる検査です。大腸CT検査では、大腸に炭酸ガスを注入し腸管を膨らませた状態でCT撮影を行います。
大腸CT検査のメリットは、大腸カメラに比べて苦痛が少ないことや、大腸の周辺まで広く観察が可能なことです。大腸内の狭窄(すぼまり)により内視鏡挿入が難しい方でも受けられます。
一方のデメリットは、X線検査のため放射線被ばくがあることです。また、何かしらの病気の疑いが見つかった場合には、精密検査として大腸カメラ検査を受ける必要があります。
まとめ
大腸がん検診としてよく行うものは以上ですが、その他にも様々な検査があります。
いずれの検査もメリットやデメリットが異なります。あらゆる面で万能という検査はありませんので、それぞれの特徴を踏まえて検査を選択しましょう。
参考
- 国立がん研究センターがん情報サービス:大腸がん(結腸がん・直腸がん)
- 国立がん研究センターがん情報サービス:院内がん登録生存率集計