健康経営に多くの企業が取り組む理由
健康経営を実践する企業を表彰する制度として始まった「健康経営優良法人制度」は経済産業省の主導のもと平成26年度から開始され、今年で早8年目を迎えます。その間、毎年のように制度や評価項目の見直しがなされ、ブラッシュアップされながら健康経営に力を入れている企業がきちんと評価されるような仕組みに徐々に作り変えられてきています。そんな経済産業省の努力もあってか、健康経営に取り組む企業は年々増加しており、ついに令和3年度は全体の申請数が15,000件を超え、申請数は過去最高を記録しました。
このように申請数が右肩上がりであることからもわかりますが、健康経営に対する認知度がこの8年の中で劇的に高まり、大規模企業が中心だった健康経営への取り組みも中小企業にまで裾野が広がってきており、SDGsの広がりもあって健康経営は今や取り組むのが当たり前と言えるほどまで経営者の間では浸透してきているのではないでしょうか。
では、そもそも健康経営とは何なのか、なぜ健康経営に取り組むことが必要なのか、何を目的として取り組むのでしょうか。
健康経営とはなにか?
健康経営とは、企業が従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。従業員への健康投資を行うことで生産性の向上や組織の活性化を図り、最終的には業績の維持・向上や株価の向上を目的としています。日本ではこの取り組みを推奨するために、平成26年度より「健康経営銘柄」の選定をスタートしており、その後平成28年度からは「健康経営優良法人認定制度」を創設しています。
健康経営はなぜ始まったのか?
健康経営は「国民の健康寿命の延伸」という国が掲げる目標への取り組みの1つとしてスタートしました。これは日本で急速に進む少子高齢化とそれに伴う労働人口の減少に歯止めがかからないことが原因です。
労働人口が減少するということはそれだけ経済が縮小するということを意味します。現代の日本において労働人口が減ることは避け難い中、経済の縮小を最小限に食い止めるために何が必要か。それは労働者1人当たりの生産性を高め、少ない労働人口でも効率的な売上や利益を出せるような人材の育成をすることです。
ただ、せっかく生産性が高い労働者が1人でも健康を害して企業を離れるとなると、その企業の損失になるのはもちろんのこと、(極端な話かもしれませんが)日本の社会全体にとっても大きな損失となります。そのため、事業継続のために今勤務している労働者に長く元気で働いてもらえるような環境づくりや、病気をせずに、あるいは病気をしても病気と仕事を両立できるような仕組みづくりが企業として必要となってきます。まして少子化が進むことで新卒を含めた採用数が減少するため、現存戦力である労働者を大切にするという企業の方向性は今後ますます高まるはずです。
こういった差し迫った危機感から企業が動き始めたというのが、健康経営が注目される原因ではないかと思います。事実、新卒も中途も採用が難しくなっている企業において、少しでも競合他社よりも求職者から注目されるようにという目的で健康経営を実践している企業もあります。そしてこれは医療費削減による健保財政の健全化という目的と絡み合い、健康保険組合が旗振り役として登場することになり、中小企業へと裾野が拡大する方向へと一気に進んでいきます。
中小企業は健康経営を進めるにあたって加入健保に「健康企業宣言」という形でエントリーし、銀の認定を目指すことが健康経営のファーストステップとなります。大企業のようにいきなり経済産業省の主導する健康経営優良法人にエントリーすることができない仕組みになっており、人的資源・物的資源の制約がある中小企業でも取り組みやすい内容・難易度に設定することで、中小企業にとって費用をかけずに取り組めるライトな取り組みが可能なものになっています。
企業が健康経営に取り組む目的とは
健康経営を進める目的は多様化しています。例えば、ブランドイメージ向上のためにベンチャー企業が健康経営優良法人にチャレンジするケースもあるようですし、健康経営に取り組むことで銀行からの低利融資が受けられたり、業種によっては入札時の加点となったりすることから、そういったインセンティブを求めて取り組んでいるケースもあるようです。
目的はなんであれ、より多くの企業が健康経営に取り組み、健康経営優良法人や銀の認定や金の認定などの認定企業が増えれば日本の労働者全体の健康度が上昇し、医療費が削減され、健保財政の健全化にも寄与するということは事実ですので、日本全体でこのような取り組みを継続することが日本の将来を明るくする材料となるのではないでしょうか。
参考
・経済産業省:健康経営
・経済産業省 ヘルスケア産業課:健康経営の推進について(令和4年6月)
・全国健康保険協会 東京支部:「健康企業宣言®」をはじめましょう!
東京桜十字でも健康経営に取り組む企業様に対するサポートを実施しています
- 銀の認定や金の認定といった健保での取り組みのサポートから、健康経営優良法人の認定取得や維持のための取り組みのサポートまで幅広くお手伝いが可能です。 特に一度取得しても1年単位で継続的な取り組みを必要とされる健康経営優良法人の場合は、次にどのような取り組みをしようと頭を悩ませている方が多いのではないかと思います。そういったご担当者様向けに他社における取り組み事例のご紹介や、企業の特性に合わせた取り組みのご提案等をしていますので、ご興味のある方はお問い合わせください。