会社の健康診断は受けるべき?
多くの方が毎年受けている健康診断。会社勤めの方は、毎年決まった時期に会社から受診案内が届く方が多いのではないでしょうか。しかし、仕事が忙しかったりすると、ついつい受診するのを忘れてしまいそうになることもあるかと思います。
そもそも会社の健康診断は受けた方が良いのでしょうか?
もしも健康診断を受けなかった場合はどうなるのでしょうか?
会社の健康診断の目的
一般的に、健康診断の目的は病気を早期に発見することと言われます。がんや生活習慣病は早期の自覚症状が出にくい病気ですので、数値や画像で客観的に身体の状態を判断することは重症化予防に効果的です。
一方で、会社の健康診断では上記の理由に加えて、従業員が働くうえでの健康を守ることに主眼が置かれています。労働者保護のための法律である「労働安全衛生法」には次のように記されています。
第六十六条
事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、 医師による健康診断を行なわなければならない。
ここでいう事業者とは会社、労働者とは従業員を指します。
同じく労働者保護に関する「労働安全衛生規則」では、健康診断ごとの対象者や検査内容、実施頻度などが細かく定められています。もしも健康診断の結果で異常が認められれば、会社は医師の助言のもと労働時間や作業内容の変更など必要に応じた対応をとらなければなりません。
会社の健康診断の受診は義務?
会社にとって健康診断の実施が義務であることがわかりました。では、従業員側にも受診の義務はあるのでしょうか。
結論からいえば、従業員にも会社の健康診断を受診する義務があります。会社が従業員の健康管理を遂行するために、従業員側もその取組みに協力をしなければならないのです。
もしも会社が指定する医療機関ではなく、他の医療機関を受診する場合も、その結果を会社へ報告をしなければなりません。これは「自己保健義務」と呼ばれ、会社の従業員は自身の健康を管理することが求められます。
一方で、個人事業主やフリーランスの方は、会社に雇用されていないため健康診断の実施義務はありません。従って、自身の健康管理のためには個人で健康診断を受診する必要があります。
健康診断を受けないとどうなるか
それでは、健康診断を受けなかった場合にはどのようなリスクがあるのでしょうか。
もしも従業員側が健康診断の受診を頑なに拒否し続ける場合には、会社の安全管理を妨害しているとして、懲戒処分対象とされるリスクがあります。
また、会社側が従業員へ健康診断を適切に受けさせていない場合には、労働基準監督署からの指導対象となる可能性があります。罰則規定もあり、悪質と認められた場合には刑事罰が科せられるリスクがあります。
また、健康診断の目的の一つに病気の早期発見と重症化予防があるので、健康診断を受けないことは、そのまま病気の発見を遅らせることに繋がります。病気によってはほとんど自覚症状が出ないまま病状が進行していき、いざ病気が発見された時には取返しがつかない状態ということも珍しくありません。例えば健康診断を受けさせていないことにより病気の発見が遅れ、さらに必要な就業制限措置も行われないままに従業員が死亡してしまったとします。その場合は、労働安全衛生法違反に加え会社側の安全配慮義務違反として、民事訴訟による損害賠償請求に発展する可能性もあるのです。
健康診断のない会社
このように健康診断を実施しないことは、会社にとっても従業員本人にとってもリスクを抱えることになります。実施していない理由はさまざまですが、創業間もなく規模の小さい会社では健康診断の手配を行うだけの人員余力が無い、そもそも労働安全衛生に対して無頓着という状態も考えられます。会社と従業員の双方を守るためにも、早々に社内体制を整えることが望まれます。
まとめ
- 会社の健康診断は、会社と従業員の双方に対して義務づけられており、会社が主体となって実施しなければならない。
- 健康診断の実施を怠ると、会社に対しては罰則規定があり、従業員に対しては会社規定による懲戒が課せられるリスクがある。
会社勤めの方は、今一度、職場の健康診断がどのようなものであったか思い返してみてはいかがでしょうか。年1回(人によっては複数回)の受診機会を有効に活用されることをおすすめします。
また、個人事業主やフリーランスの方は、最後に受診した健康診断がいつだったか等を振り返り、年1回を目処に定期的な受診をおすすめします。