人間ドックとがん検診の違いは?人間ドックでもがんは発見できる?
長寿大国と言われる日本ですが、日本人の死亡原因でもっとも多い病気をご存知でしょうか。
正解は、がん(悪性新生物)です。1981年にそれまで1位だった脳卒中を抜いて、がんが死因の第1位となっています。近年では医療の進歩により、様々ながん治療の選択肢が増えていますが、もっとも大事なことは進行前のがんを早期に発見することです。しかし、初期のがんには自覚症状がなく、早期発見するためには定期的にがんを見つけるための検査を受ける必要があります。
今回は、人間ドックとがん検診にスポットをあて、それぞれの特徴を比べてみました。
人間ドックにおけるがん検査
人間ドックは健康診断の一種で、全身の健康状態を評価するための総合的な身体検査です。人間ドックでは様々な病気を見つけることができ、がんもその一つです。
厚生労働省は、がんの中でも特に対策が必要なものを5大がん(胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮頸がん)として指定しており、人間ドックではそれぞれ次のような検査を行います。
- 胃がん
胃X線検査(バリウム検査)、胃内視鏡検査(胃カメラ)など - 大腸がん
便潜血検査、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)など - 肺がん
胸部X線検査、喀痰細胞診、胸部CT検査など - 乳がん
マンモグラフィ検査、乳腺超音波(乳腺エコー)など - 子宮がん
子宮細胞診、内診など
人間ドックのがん検査の特徴は、上記のとおり検査の選択肢が複数あることです。
例えば、肺がん検査で一般的に行われる検査は「胸部X線検査」です。身体の正面から肺を撮影した画像は多くの方が見たことがあると思います。しかし、あくまで正面角度からの画像のみですので、進行前の小さな病変は発見できない可能性があります。
そこで、胸部X線検査よりも精度が高い検査として「胸部CT検査」があります。CT検査は仰向けに寝そべった状態でドーナツ状の機械に入り、身体を輪切りにした画像を何枚も撮影する検査です。多くの情報がとれますので、胸部X線では発見できないような進行前の病気を発見できる可能性があります。
このように、通常行われるがん検査よりも、さらに精度の高い検査を選択できることは、人間ドックのがん検査のメリットです。
がん検診とは
がん検診は、特定のがんの早期発見を目的とし、そのがんに特化した検査が行われます。人間ドックと同様にいくつかの検査方法がありますが、市区町村が行っているがん検診では、検査方法や対象年齢が定められていることがほとんどです。
がん検診は、がんそのものや、進行するとがんに繋がるような病気を見つけるための検査ですので、例えば心臓病など直接的に関連性のない病気は発見できません。(X線等の画像から偶然にがん以外の病気が発見される可能性はあります。)
一方で、検査内容が絞られているからこそ、検査時間が短く、費用も安く受診しやすいというメリットもあります。
人間ドックとがん検診どちらを受けるべき?
人間ドックは全身の総合的な検査であり、がん検診は特定のがんの発見を目的とした検査です。目的が異なるため一概にどちらが優れているとは言えませんが、がん以外にも幅広く病気の有無をチェックしたい場合は、人間ドックが向いています。
反対に、ピンポイントに気になるがんがある場合には、がん検診がおすすめです。市区町村が実施しているがん検診は費用が安く済むものが多く、毎年受診しても経済的な負担は少なめです。また、医療機関が独自に行っているがん検診では、様々な検査方法が選択できる場合もあります。
最後に、病気のなりやすさには個人差があります。個々人の年齢や家族歴、生活習慣、既往症によっても病気のリスクが異なります。健診などで機会があれば、自分に向いているがん検査について医師のアドバイスを受けることも大切です。